月は幽咽のデバイス (講談社文庫)

月は幽咽のデバイス (講談社文庫)

美しい館にひそむオオカミ男の犯罪か!? 薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、オオカミ男が出るという奇妙な噂があった。瀬在丸紅子たちが出席したパーティの最中、衣服も引き裂かれた凄惨な死体が、オーディオ・ルームで発見された。現場は内側から施錠された密室で、床一面に血が飛散していた。紅子が看破した事件の意外な真相とは!?


ハッキリ申し上げまして、Vシリーズで一番嫌いな作品。トリックに関してアンフェアだとは決して言えないし(昔からあるし)、こういう種類の結末もアリかなと思います。けれど、この一直線さ加減が私には許せなかった。謎の魅力が、最後まで興味を引かせる様なモノではない。そして謎の「意外な真相」が意外でない。納得というよりもしぶしぶ承諾という感じ。というのも前作と同じで、事件現場の全貌がいまいち伝わらない。こういう時にこそ配置図があるといいのだけど(今回はいらないか…)。どうも謎でもない事を謎にしてる感じがするのだ。
と、ここまで好き放題書きましたが、2回目、もしくは何度も出てきている『100人の森博嗣』を読むと印象が少し違うのである。前巻でも書きましたが、VシリーズとS&Mシリーズは刊行順に各巻それぞれが対応してるとの事。3巻目という事は対応しているS&Mシリーズは『笑わない数学者』になります。そう知ると本当に、笑える読者。そうだ、何もかもが「笑数(略です)」だ!「笑数」も本書も評判悪い所までソックリ。これは双子なのだ。お互いの欠けた所を2冊で補完できる感じ。トリックとは別の箇所で膝を打ったので、満足。だけど評価は初読時の5点です。
このシリーズはキャラクタと会話がミステリよりも面白い。機転の利いた会話は読んでいて純粋に面白い。私は練無くんが特に好きです。今回は活躍(?)したし。練無の趣味(?)も色々な所で実は役に立っている。怪人二十面相の様な変装っぷり。練無くんが犯人で、スカート履いてるため現場にいたと疑われなかった、って話も面白いかも(面白くないか…)。そしてもう一人、保呂草さん。どうしても私の乏しい想像力だと、保呂草さんは「エヴァンゲリオン」の加持リョウジさんを思い起こさせるのです。どうですか、みなさん。

月は幽咽のデバイスつきはゆうえつのデバイス   読了日:2001年12月02日