見えない誰かと (祥伝社文庫)

見えない誰かと (祥伝社文庫)

あなたはひとりじゃない。きっとどこかにつながっている人がいる。人見知りが激しくて他人と打ち解けるのにも時間がかかったという筆者。親しくもない人と一緒に何かするくらいなら、一人でいたいという性格が、出会いによってどう変わったか。大好きな先生、かわいい後輩、一緒に働きたい友達…。誰かとつながっているよろこびを綴った初エッセイ。


どのエピソードも人と正面から向き合ったからこそ、得られた掛け替えのない感情で、読者の私としても心温かくなった。こうやって人との繋がりを大事にして肯定的に生きる事は人間にとって、とても大事な事だ、と改めて気づかされる。
本書で今まで見えにくかった瀬尾まいこという作家の実体が、分かった気になった。瀬尾さんの家族・親戚・友達や職場でのエピソードが満載で、瀬尾さんの人生、というと大袈裟だけれど、これまで彼女の歩んできた道が見られた気がする。教師としての彼女の人・生徒を見る温かい視線が良く伝わってきた。
もしかしたら、作家のエッセイというよりも現役教師が書いたエッセイとして読むのが正しい読み方なのだろうか。同業者の人が読むと、瀬尾さんの奮闘・努力・挫折などに共感し、自分も明日から頑張ろう、生徒と共に歩もう、とか思うのかもしれない。そのぐらい、教職についてのエピソードが多かったように思う。
そして瀬尾まいこ作品のファンとしては『図書館の神様』の誕生エピソードを嬉しく読んだ。垣内君のモデルになった子は、垣内君そのままで、『図書館の神様』って小説って言うよりノンフィクションなんじゃないの? とまで思ってしまった。こんな子が今の日本にいると思うと、何だか嬉しくなる。このまま成長して欲しい…。
ただ、もう少し作家らしい文章を書けないものか、とも思わざるを得ない。本書はとっても読み易い。けれど、読み応えはない。作家で国語教師の瀬尾さんを批判するのは口幅ったいが、頻繁に使われる「〜さんはすごいと思う」「私もがんばろうと思った」という文章は、まるで中学生の作文のようだった…。言っている事は正しい、だけど面白み・ユーモアが完全に欠けている。モバイル連載だから簡素な言葉を使ったのかもしれないが、作家なのだからもう少し文章に深みやひねりが欲しい。エッセイは小説以上に一文一文を読み込まれるものだから。

見えない誰かとみえないだれかと   読了日:2007年03月10日