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- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 1993/12/31
- メディア: 文庫
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幻想を愛し、奇行で知られたシュール、リアリズムの巨人―サルバドール・ダリ。宝飾デザインも手掛けた、この天才の心酔者で知られる宝石チェーン社長が神戸の別邸で殺された。現代の繭とも言うべきフロートカプセルの中で発見されたその死体は、彼のトレードマークであったダリ髭がない。そして他にも多くの不可解な点が…。事件解決に立ち上った推理作家・有栖川有栖と犯罪社会学者・火村英生が難解なダイイングメッセージに挑む。ミステリー界の旗手が綴る究極のパズラー。
冒頭から火村助教授とアリスの誕生日デート(笑)で、この本では33歳になった男二人がフランス料理店で優雅に食事してたらデートでしょ…、と一部ファンのための描写か? …なんて思ったりしてたら、飼っているカナリアをアリスに預ける隣人の女性登場。火村シリーズでアリスに近づく女性は初かも。と思ったら彼女は以降、一向に登場せず。新版の「ダリの繭」では一緒にシュールレアリスム展を見に行ってますが。シリーズの過程で、恋愛に発展するというのもアリだと思うのですが。どうでしょう?
なんてミステリに関わりのない話はここまで。本編の話。ダリを真似た社長が、自ら愛用していた「繭」の中で殺されていた、という話一点。前々から思ってたのですが、有栖川さんは短編のほうが向いている。転じて、長編にするほどのトリックでも、興味をそそられる話でもないんですよね(厳しいな…)。ミステリは明らかに最後まで真犯人が明かされないので、そこまではミスディレクションの連続、とは「ハリィ・ケメルマン」の言葉だったか。結末もそう驚くものではなしですし、火村先生の名探偵ぶりが発揮された、という訳でもない。ということで、長編小説にするほどではなかったのでは、というのが私の印象でした。