(P[あ]1-2)The MANZAI2 (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[あ]1-2)The MANZAI2 (ポプラ文庫ピュアフル)

文化祭を笑いの渦に巻き込んだ『漫才ロミオとジュリエット』から半年、瀬田歩と秋本貴史にとって中学最後の夏がきた。歩は、夏祭りで漫才をやろうと誘う貴史に対し、断固拒否の態度をとり続けている。一方、貴史の幼なじみ・萩本恵菜への思いはつのるものの、進展はない。そんな中、恵菜をめぐってある「事件」が勃発した…。今もっとも注目を集める作家の人気シリーズ第二弾、待望の文庫化。


本書には漫才シーンはない。ツッコミの歩はボケの秋本からもう一度、二人で漫才をやらないか、という話を提案されるが端から突っぱね続ける。今回は歩が「お笑い」というジャンルとその意義を考え直す回になっている。本書の中心に置かれているのは本来「お笑い」とは正反対に位置する「人間の悪意」である。足が竦んでしまうほどの「悪意」と対峙した歩・秋本は何を思うのか…。
本書で歩・秋本たちは中学3年生になり、『漫才・ロミジュリ』のロミオとジュリエットは、クラス替えによりその仲をバラバラに引き裂かれてしまう。けれど、そんな逆境に負けないのがロミオとジュリエット、(コンビ)愛の力。秋本の度重なるアタックのお蔭で二人はいつも一緒にいる。二人の間で繰り広げられる会話はやっぱり漫才のよう。漫才シーンはないが、テンポの良い会話は読んでいて心地良く面白い。そしてお好み焼き店舗「おたやん」で、歩が感じる心の安息は読者として非常に嬉しい場面。歩には心の繊細さと強靭さを兼ね備えた人になって欲しい。
人間の多面性、悪意の発現を間近に見た歩だったが、最終的な結論は単純明快。でもそれは世界平和にも繋がるような純粋な想いで胸を突く。笑いというのは陽性の感情である。陰性の側にいる人でさえも陽性の側に引っ張り込んでしまえばいいのだ。「お笑い」にはそれが出来る力があるのだから。
本書には不登校・いじめ・少年犯罪などの中学校・中学生の問題が詰まっている。今回も考えさせられる。そして自分も中学生活を思い出す。あの教室、あの空気。特に中学3年生のクラス内は、学校生活に慣れて騒がしいけれど、受験を控えているのでどこか慌しい(中・高一貫校じゃなければ)。別々の進路という岐路と、卒業までのタイムリミット。最高学年は最後の学年でもあるのだ。
しかし、秋本の本気とも冗談ともつかない歩への態度が、やっぱり「その手」のファンのための内容なのかと疑ってしまう…。児童小説の友情は友愛よりも先の感情にも思える。確かに歩なら、押しに押しまくればなびきそうな雰囲気がある(笑)。

The MANZAI<2>   読了日:2006年12月02日